「奏磨さんがいるようだったよ。まるで。
同じ歌い方で、同じ歌を歌うなんて・・・」
「同じ歌を?
じゃあ、あれはお兄ちゃんが・・・」
うろ覚えだった歌。
いつの間にか、
お兄ちゃんから教わってたんだね。
「泣きもしないで、前を向いてたお前だけど、
それを見て、俺は初めて実感した。
ああ、
この子にこんな表情をさせたのは俺だってさ・・・」
いつも大人っぽい亜貴が、
いつも冷静な亜貴が、
そこで初めて、泣いた。
ねぇ、お兄ちゃん。
なんで、亜貴にそんなことを言ったの?
どうして、そんなこと頼んだの?
亜貴は、理不尽なその約束を
果たせなかったことを悔やんでる。
どうしたらいい?
あたしはどうすればいいの?
この目の前で綺麗に泣く男の子に、
なんて声をかければいいの??
「俺、決めたんだ」
「え・・・?」
「これからはお前の傍にいようって」
亜貴は言った。
彼の横顔は何かを決意したような、
真っ直ぐなものだった。
「だから、んな顔すんな」
「え?」
「笑ってねぇぞー!?」
そういった亜貴は
いきなりあたしのほっぺを引っ張った。
「いたっ、ちょっ、やめてよ亜貴!!」
あたしが笑うと、
彼は手を離して苦笑した。
「戻るか」
「うん・・・」
ねぇ、亜貴。
亜貴はちゃんとお兄ちゃんとの約束、
守ってくれてるじゃない。
だって、あたしはあなたに支えられて、
今、ここにいるから。
こうして笑って、いられるんだから・・・。

