大嫌い・・・。
その言葉を、冷たい視線とともに浴びせられて、
あたしの目の前は真っ暗だった。
その日から、あたしに対するいじめが始まった。
よくドラマなんかで見るいじめの類もあれば、
みんなが思いも付かないようなどうしようもないものもあった。
だけどあたしは、
お兄ちゃんの前では、笑顔でいたかったの。
悟られたくなかった。
高校に入って、より一層輝き始めた、
大事な兄を心配させたくなかったから。
誰にも頼れない。
そんなあたしに、悪魔は囁き始めた。
“傷つけられるまえに、自分で傷をつければいい”
そしてあたしは、自分で自分を傷つけた。
それは深く、深く、
あたしの中に入ってくるようで。
あたしの意識を、勝手に奪う。
目が覚めた時には愛しい兄が、
あたしの顔を心配そうに覗き込んでいた。
『麗華、何でこんなこと・・・』
『お兄ちゃん・・・』
『悩んでることがあるなら、お兄ちゃんに言えって』
そこで、あたしは何も言わなかったけど、
お兄ちゃんはすぐに分った。
あたしがいじめられているという事実を。
あたしが中学を卒業するまで、
あたしは幾度となく自分を傷つけた。
その度に、お兄ちゃんはあたしを叱った。
それは、お兄ちゃんの優しさで、
あたしを怒った後は必ず、
困ったように、悲しそうに、笑うんだ。

