「モッチーの言ったことは気にすんな。
だけど、嫌いとか言うなよ。同じメンバーだろ?
モッチーには俺から言っとくからさ」
「亜貴、一発かましてやれよ」
「ばーか。たけしも練習しないと、
こんどはお前も言われるぞ」
亜貴がそう言うと、
武田くんは楽譜にくいつくように練習を始めた。
磯部くんもその言葉を真に受けて練習し始める。
磯部くんにとって、あいつは尊敬する先輩だもんね。
そりゃあ怒られたくないわけだ。
取り残されたあたしに、亜貴が耳元で言った。
「麗華、ちょっと」
「え?」
亜貴に呼ばれて、別部屋に移動する。
ドラムやギターの音が少し小さくなった部屋で、
亜貴はあたしに座るようにいった。
自分もあたしの隣にすっと座る。
「何?どうしたの?亜貴」
亜貴はあたしの顔をじっと見ていった。
「あのな、モッチーのことなんだけどさ」
「うん」
「あいつ、この間のこと気にしてるんだよ。あれでも」
「え?」
この間って・・・。
あの騒ぎのことでしょ?
なんであいつが?

