誰かが呼んでる・・・。



あたしを呼んでる。



誰?どこにいるの?



“麗華”



その声は・・・。




“麗華”




お兄ちゃん??






『お兄ちゃんっ!!!』











意識が戻って、ぱっと目を開けた。


一瞬、視界がぼやけたけど。すぐに戻った。


「藤堂!?」


「「大丈夫!?」」


亜貴・・・。


それに、磯部くんと武田くんも・・・。


あたし・・・。
どうしたんだっけ??



確か・・・。
一緒に練習してて、それで・・・。


「無理すんな。な?」


お兄ちゃん・・・?


違う。
亜貴だ・・・。


「藤堂?」


お兄ちゃん?


ううん。亜貴だよ。


「亜貴・・・」


「ん?」


「麗華って・・・呼んで」


「え?」


お兄ちゃん・・・。


もう一度、一度だけでいいから、


「お願い・・・。お願い・・・」


その優しい声で、“麗華”って、呼んで??





「・・・麗華?」


「・・・っ・・・っ!!」


涙が出た。
唇を噛み締めると、自然と涙が出た。


必死で押し殺した。


ここまで出てきた言葉を、必死で飲み込んだ。



だって、言っちゃいけなかったから。


亜貴に、“お兄ちゃん”だなんて、
絶対に、言っちゃいけなかったから・・・。




亜貴は泣いたあたしを抱きしめてくれた。



不思議だ。
亜貴はお兄ちゃんに良く似てる。



あたしの、お兄ちゃんに・・・。





「・・・なさい・・・」


「え?」


「ごめん・・なさい」


ごめんなさい。


ごめんなさい。


迷惑かけちゃって、ごめんなさい。



心配かけちゃって、ごめんなさい。



だから、だから・・・。


いなくならないで?


お願いだから、
離れていかないで?



ずっと、そばにいて?


ねぇ、みんな・・・。


ねぇ、お兄ちゃん・・・。