「っぁ・・・・っ・・・っ・・・!!!」





突然、祐兎は喉を押さえた。


苦しそうに、煙草を拾い上げた手を悔しそうに握りしめて。


そして、あたしはその時ふと思い出した。


昼間、亜貴が言ってたこと・・・。









―歌えないんだ―









あ・・・。



そうだった。


だからあたしはここに呼ばれて・・・。





そんなに酷いなんて思わなかった。


自由奔放で、不良っぽくて、
上から態度で偉そうなあいつが、


こんなに苦しそうに、悲しそうに顔をゆがめるなんて、
そうとうなことなんだなって思う。





あたしがその様子を見ていると、亜貴が戻ってきた。



「あ?こんなとこでなにしてんの?中入れば?」


「え?あ、ああ!そだね」



亜貴は不思議そうにあたしの顔を覗き込むと、
何気ない顔でスタジオに入った。



「モッチーだけ?何だよ。あいつらまだなのかよ。
 てか同じ学校ならなんで一緒に来ねぇの?」


「うっせ。どこにいっかわかんねんだよ」


祐兎は普通に何事もなかったかのように返した。





普通の声は出るんだ。


歌えないだけで・・・。




でもそれって・・・
辛くないのかな?