病室の前に集まっているメンバー。


あたしは、
白い床をじっと睨み付けていた。





「なんで、言ってくれなかったんだよ」


武田くんがそう、静かにいった。


「酷いッスよ。2人だけが知ってて、
 俺ら、何もわかんなくて」



磯部くんも、めずらしく怒っていた。




あたしと亜貴は、何も言えないまま、
ただ、その怒りと失望の声は廊下に響く。



祐兎はまだ手術中で、なかなか帰ってこない。



医者もびっくりするくらい、
発作を自分で抑えていたらしかった。



そんなになるまでライブが、
バンドが大事だったんだと打ちのめされた。





今になって、叩かれた頬が痛み出す。




「亜貴、モッチー、そんなに酷いのか?」


武田くんはため息をついて亜貴に聞いた。



亜貴は少し顔をあげて武田くんを見たあと、
すぐに視線を逸らして口を開いた。




「もう・・・かなり無理をしてるんだ」


あたしはそう、
静かに話し出した亜貴を見つめた。





「俺だけが知ってた。麗華の前で発作が起きて、
 麗華は知らなかったのに
 “知ってしまった”だけなんだ。

 黙ってくれって頼んだから黙ってただけ。
 麗華は何も悪くない。悪いのは俺だよ」





「亜貴・・・」



亜貴は、きっと一番
ショックを受けてるはずなのに、


あたしを庇ってくれた。



あたしは亜貴をじっと見つめる。




亜貴は苦しそうな顔をして床を見つめていた。



こんな亜貴、初めて見たよ。






どうして?



何してるの?祐兎。




早く、早く顔を出して。








-あれ?お前らなにやってんだよ?-








くらい言って、みんなを明るくして。











ライブ前みたいに、ふっと、突然現れてよ。








そうしたら、あたしが怒ってあげるから。








遅いよって、怒鳴ってあげるから。









だから・・・。








「祐兎・・・・」






あたしはポツリと呟いていた。









そんな時だった。