「おい、出るぞ」
「え?あ、うん・・・」
いつの間にか、祐兎も帰り支度を終えていて、
電気スイッチの前に立っていた。
あたしは急いで椅子から下りて、
祐兎のそばまで走った。
「よし。帰るか」
「あ・・・うん」
自然と、どちらからでもなく手を絡める。
祐兎は、どう思っているんだろう。
こういうことに、
あんまり意識はないのかな?
今日も雪が降っている。
あたしの右手と、祐兎の左手は、
寒さなんて忘れるくらいあったかくて、
あたしは何度もそのつながれた手を見つめた。
「ホワイトクリスマスになるといいな」
そっと、そう呟く。
祐兎は反対側の手で
頭の上の雪をほろった。
「やだよ。俺のこの綺麗な金が白くなる」
「あはは。でも、もとが金色だから、
雪が降ると銀色っぽくなるね」
「あー。かっこ悪ぃ」
「いいじゃん。シルバー」
祐兎の金髪と、
雪が降った時限定の、シルバー。
今もそのシルバーが、
街灯に照らされている。
「あたしは好きだけどな。その髪」
「どっちが?」
「どっちも・・・」
「・・・ふーん。あっそ」
“好き”。
本当は、髪だけじゃない。
あなた自身が好き。
そういいたいのに、そういおうとすると
簡単に言えた“好き”が、喉の奥に詰まる。
あたしは祐兎と繋いだほうの手を強く握りしめた。
「俺、明日いるのかな?」
「え・・・」
突然、祐兎はそう言い出した。