「違ぇよ。そんなん言ったら、またお前に泣かれるし。
 俺が歌わねぇのは、お前が気に入ったから」


「え・・・?」


「そりゃ、最初はなんだよこいつって思った。
 俺の方がぜってぇ上手いのにって」



そっか。


そうだよね。



あたしだって、
祐兎の立場にたったら、ムカつくかも。



自分の方が明らかに上手いんだもん。



「だけど、決して上手いわけじゃねぇけど、
 ちゃんと聞ける。
 や、“聞こえてくる”んだよな。お前の声」





何それ・・・。


そんなふうに思ってたの?




「それって、褒めてるの?けなしてるの?」



「はぁ?わかんねぇ?
 褒めてるだろ。どっからどうみても」


祐兎が素っ頓狂な声を上げた。



そして、
あたしを見るとふっと笑った。



「だからさ、いらなくなんかねぇよ。
 お前はこのバンドの仲間だろ?」


「いいの・・・?」


「リーダーの俺がいいっつってんだから、
 いいんだよ」




祐兎らしい、歓迎の言葉。




祐兎らしい、励ましの言葉。





なんて、優しい言葉なんだろう。






口は悪いのに、心に響く。





祐兎のくれたココアが、
すごく、すごく暖かい。



さりげなく握ってくれる手が、
とても温かい。



もしかしたらあたしは・・・。





「もうすぐでクリスマスライブだな」


「うん・・・」





「俺、そのライブの次の日、誕生日なんだ」





「え・・・?」





-18の誕生日を迎えられないかもしれない-






そう、あの日あたしは知った。


あんまりにも、
祐兎が元気に振舞うものだから忘れていた。


突きつけられた余命は、
こんなにも早々と近付いていたなんて・・・。



「祐兎・・・」


「何そんなシケた面してんだよ!?
 そんな顔させるつもりじゃなかったんだけどな。
 プレゼントだよ。誕プレ」



「へ?」