「は?」


祐兎は短くそう発した。


「なんでそんな・・・」


「もう、治ってるんでしょ?喉・・・」


「え・・・」



あたしがそう言うと、
祐兎は言葉に詰まったようだった。



やっぱり、治ってる。



いつだろう。そう感じたのは・・。



たぶん、あの日の夜からだ・・・。



あたしを、
家まで送ってくれた帰り道のときだ。



あの時の祐兎の声は、
今までの少しハスキーな声じゃなかった。






耳に残る、心地のいい低い声。




たぶん、あの時から、
もうわかってたのかもしれない。



「なんで気付いた?」



「すぐ気付いた。
 いつものハスキーボイスじゃなかったし」


「はは。それで・・・なんで
 “いらない”とかの話になんだよ?」



祐兎は少し笑ってそう聞いてきた。






何でって・・・。


わかってるじゃん。
そんなの。





「だって・・・。もう治ったなら、
 祐兎がボーカルやるでしょ?
 そうしたらあたしはもう、
 歌わなくてもいいわけだし・・・
 

 ・・・本来のBlue skyに戻るじゃない」






急いで、そこまで続けて喋った。



早く言わないと、泣きそうだったから。








「俺はもう、ボーカルはやらねぇよ」







「え・・・?」





なんで・・・?




あんなに歌いたくて、必死で、






それなのに・・・。どうして?








「それって・・・。病気と関係ある?」









“もしかして”









それだけがあたしの頭を過る。




祐兎はふっと笑って首を振った。