頬に、暖かいものを感じた。




「・・・祐兎」





そこには息を切らせて、
鼻を真っ赤にした祐兎が立っていた。


あたしの頬に当たったのは、
缶のココアだった。



「なんで・・・」


「お前なぁ!ケータイくらい持って出ろよ!!
 探しただろ!?」



祐兎はあたしが何かを言う前にそう怒鳴った。


そういえば、あたし、
そのまま出てきたから何も持たなかったんだ。


あたしは差し出されたココアを受け取った。



「何これ・・・」


「ばっか。お前何時間いたんだよ。
 凍傷なっても知らねぇぞ!?

 せっかく寒ぃと思って買ってきたのに・・・。
 いらないなら返せ」



「いるよ!!馬鹿」



あたしは祐兎が取り上げたココアを取り返した。







「あのさ」



「え?」



「・・・悪かったよ。さっきは」



「・・・祐兎?」






祐兎が突然謝った。


「言い過ぎた。何か、
 いつものお前じゃなかったから、つい・・」


「・・・ううん。あたしも、ごめんなさい」


あたしはそういって、ココアを握りしめた。


「確かにボーっとしてたと思うけど、でも、
 適当、とか、ふざけてやってたとか
 そういうのじゃないの」



「ああ。知ってる」



祐兎が頷く。


あたしは一つ息をして、うつむいたまま言った。












「ねぇ、あたしは、いらない?」