いつもの練習で、
曲の途中、祐兎がいきなり曲をとめた。


「ちょっと待て。おい、麗華」


「あたし・・・?」



とめられた原因はあたしらしい。


あたしはびっくりして祐兎を見た。


「お前、何でそんなボケーッとしてんの?
 何かあった?」


「え?何もないけど・・・」


「じゃあ、なんでそんな適当なんだよ」



祐兎が、怒ってる。


みんなを見ると、
みんなもそう感じているのか、


視線を逸らして俯いている。



亜貴は、
眉間にしわを寄せて祐兎を見つめていた。



何?


適当?


あたし、
適当になんかやってないけど・・・。



「適当って・・・っ
 ちゃんと真面目にやってる!」


「気持ちが入ってねぇんだよ。
 前までみてぇに歌えって」



「いつも通りだよ」



「はぁ?お前、気付いてねぇの?
 いっとくけど、今のお前、
 かなり下手くそだぞ?」






“下手”。



その言葉を言われたとき、
あたしの周りから音が消えた。



何も聞こえなくなって、
ただ、その言葉だけがあたしの耳の奥をつつく。




下手・・・。




「モッチー、やめろ」


亜貴の声が聞こえる。




「そんなんじゃ、マイク持つ資格ねぇよ」



「モッチー」




「おい、真剣にやれよ。麗華!!」







「祐兎!!!」