「ん?俺はいいんだって。
 冷たいもの、あんまし食わないし」


「そうなの?・・・亜貴、はい。
 ここ食べていいよ?」




あたしは自分の食べている棒アイスを差し出した。



亜貴に差し出したほうは
まだ口をつけてなかったから、

そっちのほうを亜貴に傾けた。




「マジで?んじゃ、貰うかな?」


「え・・・?亜貴・・・っ!?
 そっちは・・・」






亜貴はあたしの手を持って、
反対側のほうにかじりついた。




触れる手が熱い。


あたしはドキドキする鼓動を抑えられずに、
ただぼけーっとそこに立ち尽くした。



亜貴は口元についたアイスを
指ですくって舐めた。



その姿が大人っぽくて、ついつい見入ってしまう。



「ご馳走様。サンキュ」



「亜貴、なんか・・・あったの?」


「ん?なんで?」


「だって・・・」




いつもと違うから・・・。


そう言おうとしてうつむいた。



亜貴はあたしを心配そうに覗き込む。



「ん?」


「何でもない!早く帰ろう。
 アイス、溶けちゃう」


「ああ、そうだな」









このところ、亜貴の様子が変。



前もそんなことあったけど、
そんな違和感はすぐに消えた。



だけど、最近はなんだか違う。



いつも優しい亜貴だけど、
時折、悪戯っぽい行動をとることがある。



あたしはそんな亜貴に少し戸惑いながらも、
このメンバーで夏を終えていた。