「今からちょっとだけ昔、あるところに幼い姉妹がおりました。」 そっと、昔話を話すノリで喋る。 そうでもしないと、泣くから。 天道は空をみあげていて、きいているのかもよくわからない。 「姉の名前は紅羽。妹の名前は美鈴。二人は大変仲のよい姉妹でした。」 美鈴。 もういない、私のただひとりの妹。 「美鈴は小さいころに、難病にかかっていてそれを見事なおしてくれた お医者様に酷く憧れていました。」 「美鈴はお医者様になりたかったのです。」 そう、なりたかったのは美鈴。私じゃない。