俺自身も人数を見極めながらやりあっていたはずが、
一人で倒すには、分が悪すぎる人数が集まり
最初に殴られ倒されたのをきっかけに、防御に徹しながら
腹部や胸部に入る暴力を必死に防ぐ。
何時の間にか持ち出してきた、
棒による乱暴。
口の中を切って流れ出る血を手で拭い取って、
そのまま、砂の上に吐き出す。
……兄貴……。
力を貸してくれ。
俺は神威を助けたい。
節々まで痛みが走る体を必死に起こして
ゆっくりと立ち上がるとまた神威のもとへと走り出す。
もう一度、
神威の腕を掴み取る。
村人たちの暴力を受けて同じ繰り返し。
「神威、
手を取れっ!!」
近づいて、何度も叫び続けるものの
神威の返事は聞こえない。
輿に居た時は、俺の名を呼んだはずの神威は、
もう瞳に何を映さなくなったように、
「村人たちを助けないと」
っとまるで暗示にでもかかったかのように
うつろな目を向けてブツブツと繰り返して紡ぎながら
フラフラと海へと向かい続ける。
無力感だけがただ押し寄せながら、
神威にもう一度近づくタイミングを
見計らいながら村人たちの暴力を耐えしのいでいた。