悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence



「ご当主、いよいよ明日が儀式となります」



いつもの様に康清が入って来るや否や、
恭しく頭を下げて敬意の姿勢を作る。



「わかっている。
 当主として、ボクも逃げることはない。

 だからもう下がれ。

 朝まで一人にしてくれ」



淡々と告げると、康清もまた部屋を後にする。





明日、この身は海へと還される。






ボクのその未来は、もう変わることなどない。





華月……万葉……。




お前たちも、ボクが当主としての務めを
果たすことが望みなのか……。





窓から眺める暗がり、
ボクは自らが、小さな籠の中に閉じ込められる鳥のような
そんな錯覚にすら捕らわれてしまう。


ボクの周囲には、常に透明な籠が付きまとい続けてる。






徳力の人間と言うこと。

一族の当主と言うこと。

この村の生神だと言うこと。




ぼんやりと外の景色を望み続けながら、
脳裏に浮かんでくるのは、早城飛翔。



お父さんの弟だと知らされた
アイツの顔だけだった。





アイツと最後に逢ったのは、
昂燿の寮まで送って貰った日。

アイツと最後に話したのは、
終業式の前夜。






……何思い出してたんだ……。




アイツは一族の裏切り者だろ。

アイツは一族を全て捨てて、
柵から解放されたんだ。



だったら……このバカらしい茶番に
付き合わせる必要などないだろ。