人気の感じられないシーンと静まり返った屋敷内を
周囲に気を張り巡らせながら、一歩ずつ前に足を踏み出していく。
こんなにも静まり返った総本家は初めてで。
総本家に居る人を探すように、家の中へと一歩踏み入れた途端、
突然、重苦しい空気が体中に張り付いてきて圧迫していく。
常識では計り知れない現状に理性はついていくことは出来ず、
締め付けられる感覚に、意識を手放した。
次に目が覚めた場所は見知らぬ場所。
洞窟の中に作られている座敷牢なのか、
時折、ピチャンと水滴が落ちては跳ねる音が耳についた。
光のささない空間で、
手探りで携帯電話を掴む。
一途の望みをかけて開いた携帯は、
すでに充電がキレて、音信不通の状態だった。
これじゃ、
GPSで居場所を知ることも出来ないか……。
まだ痛みの残る重い体を
岩肌に寄りかかせるようにして起こすと
息苦しさが残る体。
何処からともなく流れ込んだ生ぬるい風が頬に触れた。
暗闇に視界が慣れ始めた頃、
改めて自分の居場所を観察するように見つめる。
此処は何処なんだ?
脳裏には総本家周辺の地図を思い浮かべながら、
総本家の敷地で体験した、非現実的な出来事。
そして……今、俺の身に降りかかっている出来事を
冷静に分析するように、思いおこしていた。
この時点で……総本家に向かった日から
何日過ぎているのかわからない。
ただ此処に来る前に予防線は貼ってある。