悧羅の卒業生……。


そう返答されてしまえばそれまでなのだが、
それでも、心は面白くない。




雷龍の札・神前の卒業生。


それだけのステータスがあり、
父さんの血の繋がった弟であるなら、
ボクの地位は簡単に脅かされてしまう。




「ガキ、ほらよっ。
 昂燿校についたぞ。

 お出迎えだろ」


そう言ってアイツが視線を向けた方向には、
ボクのデューティーが、メイトロンと一緒に姿を見せる。



そしてその隣に居るのは、昂燿校の生徒やら誰でも知ってる
伝説の最高総と言われる、伊舎堂裕さん。




「お帰りなさい。神威、大変な出来事でしたね」



そう言ってボクを温かく迎えてくれるデューティー。




「飛翔、見送りお疲れ様。
 帰り道も安全運転で」


伝説の最高総に声をかけられたアイツは、
ゆっくりと会釈して、ボクの荷物をメイトロンに手渡すと
運転席に戻って、車を走らせていく。




その日から二週間。


ボクはただ小学生としての時間を楽しんだ。
終業式が行われる日まで。




だけどその夜から、ボクは何度も何度も夢に魘されて
眠ることが出来なくなってしまう。



雨が沢山降りだした日、
誰かが母さんを迎えに来る。



真っ白な装束に身を包んだ母さんが、
ボクをギュッと抱きしめた後、ボクを父さん預けて真っ暗な外へと出かけていく。



母さんが外に出た途端、
ソーリャーっと声が聞こえて、何かの音色と共に遠ざかっていく。



その声を聞きながら、
父さんは声を震わせて泣きながらボクを抱きしめた。




母さんが荒波の中に助けを求めながら沈んでいく。




そんな夢を見ては、ボクは叫ぶように声を出して覚醒し続ける。
その度に、ポーン寮で一緒に眠るルームメイトを巻き込んでしまう。



こんな夢なんて、見た事なかったのに……。


どうして?