「あらっ、そうそう。
 勇ちゃん、千尋坊ちゃんも受験合格したのね。

 雄矢先生に伺って本当に私も嬉しいわ。

 そちらは、いつも倍音の日に教会に顔を出してくださる氷室君だったわね。
 貴方は?」

「有難うございます。
 
 私も春からこちらで研修が決まりました」

「まぁまぁ、それは喜ばしいことね。
 明日もボランティアには来てくださるのかしら?

 ボランティアじゃなくて、もう研修を初めても大丈夫よね。
 お昼は、赤飯を作ってお祝いするわね。

 それで勇ちゃん、後ろの方は早城飛翔君だったわね」

「えぇ、そうですよ。
 飛翔は……多分、今日が合格発表だって覚えてないんだと思います。

 僕も忘れてて、起きてすぐに千尋にきいて思い出したくらいで」



勇と水谷さんの会話を聞いて、
俺もようやく今日が、合格発表の日だったことを思いしる。



「まぁ、それは大変ね。
 早城君は、ずっと忙しかったんだものね。

 どうぞ」



そう言って水谷さんは新聞を俺の前に差し出してくれる。


手渡された新聞を受け取って、
開くと早々に、俺自身の受験番号を確認する。



受験番号を見つけて、無言でガッツポーズをした俺を見ていた
二人は、嬉しそうに顔を見合わせる。




「あらあらっ、三人とも合格なんて素敵ね。
 私も忙しくなりそうだわ」



そう言いながら、水谷さんと勇が呼んでいたその人は
俺たちの前に、コーヒーカップを置いた。



一緒に添えられているのは手作りのお菓子。





差し出されたケーキにフォークをいれて
口元に運ぶ。



甘いのが苦手な俺でも食べやすい甘さ。




「水谷さん、もしかしてこれって知成?」

「知成って、若杉さんですか?」

「あらっ、若杉君のことも知ってたのね。
 勇ちゃん、そうよ。

 お友達だったらいいかしら?

 若杉知成君、後お友達の蓮井史也君も合格。
 研修が決まったわよ」



大学で何度か会話をしたことがある二人を思い浮かべながら、
春から始まる、俺の新しい時間に想いを巡らせる。






あの出来事から、
俺自身もかなりいっぱいいっぱいだったのだと
気付かされる。




そんな時、傍でストッパーの役割を果たしてくれる親友の存在。