「早城っ、この子のことは任せていいから、
君は避難所で出来ることを。
ここで出来る処置を終えたら、
ヘリが飛べるタイミングで、神前へと搬送する」
そう言うと、先生たちは神威の処置を軽く終えて
手作り担架に乗せると、避難所の方へと搬送していく。
避難所には、神前のスタッフたちに混じって
由貴と勇の姿が確認できた。
「裕兄さん、飛翔」
「勇人、ヘリの交渉を頼む。
神前まで搬送したい」
裕さんに指示された勇は、
すぐに何処かへと走って行く。
「飛翔。その子?」
「あぁ」
「見つかったんですね。
飛翔の甥っ子」
見知った顔を確認して、
俺の貼りつめた緊張も一気に緩んだのか
少し傾いだ俺を由貴が支えてくれる。
「飛翔、僕と由貴も後で行く。
神前の天李先生が同行してくれるみたいだから、
ヘリに乗って。
先に神前で様子を見て鷹宮に転院させるから」
慌しく動き始めた歯車に
流されるように俺はヘリにガキと共に乗り込む。
ヘリは故郷を離れ、
住み慣れた都会へと空を渡る。
心に降り続ける
雨が呼び寄せた出逢い。
初めて、出逢った兄貴の忘れ形見の存在を
近くで感じながら。