「アイツが桜鬼のところまで案内してくれる。
 追うぞ」



そう言って、真っ先に金色の鳥を追いかけながら走っていく。


それは地面を走っているのではなく、ただ何もない空間を走り続けるような
不思議にな感じ。


それは夢で何度か経験した、夢渡りの感覚にも似ていた。
だけどその夢渡りの友として、今はあの三人が常にボクの傍に居る。



『和鬼……私を殺して……』


悲痛な少女の声が深くボクの心に突き刺さる。


『珠鬼、ボクの未来はもう短い。
 
 この呪詛は消えることはないと神に告げられた。
 ボクの歩く道も残すところは後僅かだと。

 咲が言ったんだ。
 ボクに……コロシテ欲しいと。

 ボクは望みを叶えるよ。

 咲の願いを
 ボクの最後の力で……』



桜鬼、早まるなっ!!


そうさせないために、
ボクたちはこの場所までようやく来れたのに……。


次々と流れ込んでくる意識の渦に飲まれそうになりながら、
ボクは今も金色の鳥を追い続ける。


ボクたちがその場所に辿り着いた時には、
ボクが感じていた違和感の真実が感じ取れた。



桜鬼が対峙しているのは、
角を生やした鬼の姿の男とあの依子。




慌てて桜鬼の傍に行こうとしたボクを飛翔の腕が引きとめた。
それと同時に、柊は何かに備えるように指文字を描き続けていた。




桜鬼が珠鬼と呼ぶ青年の姿の鬼。

あれは……味方なのか?




すると男の姿をした鬼が、徐々に何かを口走りながら
女の姿へと変化を遂げていく。



『どうだ?
 一番大切なものを奪われた悲しみは?

 お前はあの日、私の大切なものを奪った』


口の形を辿っていく。




「えっ?何?
 ちょっと神威、あの女の人はなんて言ってるの?」


声を潜ませながら問う桜瑛。


って……「桜瑛、後で説明するから。今は静かにしてて」口早に告げて、
そのままボクは更に精神を集中していく。



あの鬼の女は、風鬼の婚約者。
その人の名前が紅葉……。


だがあの依子が名乗っていた名前も……紅葉……。




あの女が依子に憑りついて操っていたのか?



依子はYUKIとしての桜鬼が好きだった。
そして桜鬼は、あの神社の孫娘が好き。

紅葉は……?