「失礼致しました。
 徳力・総本家の方でしたか。

 申し送れました。
 本官は八代【やしろ】と申します。

 この大雪の被害で、この地域一帯は雪崩がおこり道が塞がっております。
 至急、ヘリにて総本家の敷地へと入れるように致します」



そう言いきると、すぐに連絡を取り始めて、
キビキビ動き出す。



「飛翔、私も君が来てくれて心強いよ。
 今は何をやってるんだね」

「とりあえず今年、医者の国家試験を受けました。
 まだ合否はわかりませんけど、受かったら研修する病院も決まってます」

「こらっ、飛翔。
飯沼先生になんて口調してるんだ。
 先生は、今は……」

「早城君、そんなことはどうでもいいよ。

 今は私は政治家ではなく元教師と元教え子。
 それだけだよ」


養父たちのそんな会話を聞きながら
先生が今は政治家になったことを知った。



「飛翔、私も少しでも
 早く腰の重い上を動かせるように尽力する。

 徳力の当主がまだ見つからない。
 総本家のことは任せたぞ。

 徳力の力でこの一件の早期解決に協力願いたい」


「わかりました。
 本家の者と合流しだい早期対応させます」


先生との再会も早々に、到着したヘリに乗り込んで、
本家の敷地内に入り込む。


下の村を見下ろすと、あたり一面真っ白で、
着陸態勢に入ったヘリから見た故郷は、
雪崩によって埋もれてしまった地区。

雪の重みで潰れてしまった家屋が視界に止まる。



そんな想像以上の状況を目に留めながら、
ヘリはゆっくりと、総本家のヘリポートに着陸した。


再び雪が降り始める故郷。

ヘリポートから、
村のメインロードの方へと歩いていく道すがら、
養父が言葉を続けた。



「飛翔、……いやっ、今日からお前は総本家の人間だったな」



養父はいつもの口調で話しかけるのをやめて
一人、自身に言い聞かせるように呟く。



「飛翔様、村の者たちはこちらに避難させています」



村人たちにも解放されている総本家の敷地内の一角。