「桜鬼、何を企んでる?」


ボクは鬼を睨みながら、鬼の身を封じるために言葉に魂を宿らせる。


「桜鬼として。
 ボクの地を守るものとして成すべきことを」


鬼は憑き物が落ちたように穏やかな様子で告げた。


「アナタは?」



ふいに僕たちの方に近づいてきて、声をかけるのは今回の一番の被害者かもしれない
あの神社の孫の母親。


その視線は鬼の方へと向けられている。


「ボクの名は、桜鬼神(おうきしん)。
 咲はボクが守ります」


力強く宣言した鬼は、そのまま闇に紛れるように姿を消した。


それと同時に、蒼龍の手によって一気に破壊されたような惨状になっていた家は
柊の術によって元の何もなかったかのように時間を修復させていく。


あまりの一瞬の出来事に、その家の住人たちは唖然としている。

その人たちにも、柊は指文字を描いて何かを施しているみたいだった。
それが記憶を少し触っていたのだと、その直後に気づかされる。



あの鬼を追いかけて訪ねてきたボク達は、何時の間にか『咲久が依頼した祓師』っと言うことになっていて
中心に立つ柊と、その関係者と言う立場で一連の出来事を聞き出すことが出来た。




譲原咲の母親の異変が始まったのは六月の初めごろ。

そして六月の終わりから今日に至るまで、
少女が現れては、いつも同じ言葉がリフレインして、
金縛りにあったように思い通りに動けない日々が続いていた。





アナタの家族を壊すなんて
私には簡単なの。


アナタの家族を守りたければ
咲を追い詰めなさい。


咲をもっと苦しめなさい。



私からYUKIを奪ったあの子を。



あの子が居なくなれば、
YUKIは私だけのモノになるわ。






その少女の姿は資料にあった依子と同じ姿だと確認して貰った。