先に到着していた、柊・桜瑛・暁華と合流して
ボクたちが、神社の境内に到着した時、倒れ込む鬼の姿と
咲と共に行動していた二人の少女が、
対面する誰かをまっすぐに見据えているようだった。




「神威、対面しているあの顔……報告にあった依子と言う人物だろう」



飛翔がボクに小さく告げる。



「依子?
 何故、そいつが此処で関わる?」

「そこまでは情報があがってない」



今一度、呼吸を整えてボクは龍の刻印が浮かび上がる場所を見つめて、
じっくりと念じ続ける


*

あの者を助け出す力が欲しい。

*



その背後から、聴きなれた声が響く。



「浄化の焔よ」



桜瑛の声と、桜瑛が操る鈴の音が周囲を包み込み
アイツの掌から、炎が迸る。



その直後、柊もまた召喚していたのか
天が割れて降り立った、髪を揺らす女性。


蒼龍の存在。


顕現した蒼龍は、大きな水の渦の中に
依子と飛翔が言っていた存在を、巻き上げて
天高く消えていく。



薄らいでいく姿の中で、蒼龍は鬼に告げる。



『桜鬼神、我が手を煩わすは何用か?』



その鬼は消えゆく蒼龍の姿にただ頭を下げて詫び続けているようだった。




蒼龍が消えた後、木々は嬉しそうに葉を揺らして
喜んでいるように感じられた。




蒼龍が一気に清めた周辺の不浄。





ボクは倒れ続ける鬼の元へと歩いていく。





「宝さま、神子様方。
 どうぞ今宵は我が家へ」



咲久が駆けつけて、ボクタチに声をかけると
そのまま鬼の元へと近づいて膝をつく。



「和鬼さま。
 今宵は、この咲久の家でお休みくださいませ」



そう言って、その場に居た二人の少女と境内で別れて
鬼を抱き上げると坂を降りて自身の家へと連れ帰った。






夜、咲久の家を後にして、何度か桜塚神社の境内へと足を運ぶ。




この神社の結界を弱めている何かを探すために。


柊を中心に、何かを探していながらも
ボクは眠り続ける鬼が気になって仕方がない。



境内から坂を降りて、鬼が眠る部屋の窓が見える場所へと移動する。