「おいっ、どうした?神威」

「桜が教えてくれた。
 鬼の名前は、桜鬼神【おうきしん】。

 鬼としてのもう一つの名は和鬼【かずき】。
 
 現世【うつしよ】の名は、由岐和喜【ゆきかずき】。
 ミュージシャンのYUKIと関係あるらしい。

 一週間前、この場所が大きく揺れて以来、鬼の役割を果たすため
 異次元を渡り歩いてるみたい」

「非現実すぎて良くわからんが、お前の待ち人は此処に居ないんだな」


俺の問いにアイツは頷いた。



「後は、アイツを取り巻く環境。
 昨日居た、三人の少女。

 桜瑛が通う、聖フローシアの高校生。

 咲久の孫、譲原咲【ゆずりはら さき】。
 咲の友人・射辺司【いのべ つかさ】。
 司の姉、射辺一花【いのべ いちか】。

 射辺は三杉の傘下にある子会社の代表を担う家柄。

 フローシアのことは、桜瑛に聞けばわかるかな?

 飛翔、放課後を狙ってアイツの学校まで車を」


そのまま神威は車へと戻ると、
シートにぐったりと体を預けながらゆっくりと目を閉じると
すぐに眠りについてしまった。



俺にとってはただの大きな桜の木。
だけど神威は、桜の木を通して何かを見出したようだった。





神威を眠らせたまま、車を走らせる。


とりあえず鷹宮まで車を走らせて、軽く処置室で点滴をさせながら
休ませつつ、俺自身も休みの日ではあるけど、時間を持て余して
遅れている勉強をすませようと、医局に入って本を一冊手にしながら
神威の傍で読書を始める。


約40分くらいの点滴を終えて、そのままアイツが目覚めるのを待つ。



お昼を少し過ぎた頃、アイツは目を覚ました。


目覚めたばかりの神威を連れてランチを食べた後、
今度は徳力の本社へと顔を出す。


そこでアイツがなすべき仕事を一通り終えて、
ようやく聖フローシアへと車を向かわせた。


初等部の下校時間。


次から次へと制服に身を包んだ生徒たちが
門の前でシスターに見送られながら帰宅していく。


そんな校門前に車を停車する。



校門前に停車するとすぐさま、門の前に立つシスターが警戒しているのか
近づいてくる。


先に運転席のドアを開けてシスタ一に礼する。



「校門前ですいません。
 私、早城飛翔と言うものです。

 こちらの初等部に通う、秋月桜瑛さんを迎えに来たものです」


そのまま身分証明を見せながら声をかける。


「早城さまですね。
 秋月桜瑛の迎えと言いましたね。
 学園に登録いただいていますか?」


すると今度は助手席から神威が降りてきて近づいてくる。


「桜瑛っ!!」

「あっ、神威……」


校門から手を振りながら駆けてくる桜瑛。


「秋月家の御令嬢たるお方が、どのようなお振舞ですか?
 もっとたおやかになさい」


即座にシスターに注意されて、
桜瑛はしずしずと歩きながら、シスターに一礼する。