何処か懐かしさの感じる手料理を食べながら、
俺たちは久しぶりに、いろんな会話を弾ませる。



由貴が今も感じている、時雨のこと。
そして妃彩ちゃんのこと。

勇が抱える妹の優奈のこと、
緒宮と鷹宮の狭間で、今も揺れ動いていること。

そんなアイツらが先に手の内を見せてくれたから、
俺も自分のことが話しやすい。





まだぎこちない神威との時間。
一族のナンバー2と言うポジションに今も振り回されている現実。

名ばかりのナンバー2で、
何の役にも立てていない現実がもどかしい。

それと同時に、鷹宮の研修も疎かになっていて
何もかもが後手後手にまわってしまっているように感じている現状。



それぞれの話を一通り話し終えて、すっとしたところで
個室からお手洗いに移動して奥座敷に戻る途中、扉が開いて見慣れた顔が視界にとまる。


「冬生、来てたのか?」

「飛翔、久しぶり」


そう言って声をかける冬生の隣には、女性が一人。


「ご無沙汰しています。和羽さん」

「早城さん、ご無沙汰しています。
 冬、良かったらお友達とどうぞ?

 瞳矢のことで疲れてるでしょ」

「良かったら奥座敷に来ませんか?お二人で。
 俺の鷹宮の連れもいますが」

「すいません。お知り合いさんでしたら、
 相席して頂けるとこちらも助かります」


主人の声もあって、俺は二人を奥座敷に連れてはいる。




そこで聞かされたのは、冬生の義弟がALSと言う難病を発症してしまって
今闘病生活を送っているという話だった。


大学を卒業して一年目。



俺たちそれぞれは、沢山の現実問題を抱え向き合いながら
必死に出口を探して歩き続けているようだった。





2時間半ほどの時間で息抜きをした後、勇は千尋の迎え、由貴は時雨、俺は親父。
それぞれの迎えの車に乗り込む。


「冬生、和羽さん。親父に送って貰うよ。乗って」



その後も、アイツらの自宅に到着するまで
俺は親友と話し続けた。



「飛翔、いい友を持ったな」



ハンドルを握る、親父の一言。



気心知れた奴らと、話せるそんな時間が愛しく思えた瞬間、
ほんの少し心が晴れやかになった気がした。