その言葉に俺は、すぐに頷いた。

頷いた背景には、
一族のことを何も知らずに離れすぎていた罪悪感に近いものもあったかもしれない。

ただ、今の俺には早城の家族同様に、
この徳力に連なる存在も愛しいと思えるから。 




話を終えると、いつものように神威を連れて海神寮へと送り届ける。

そのついでに夕妃と華暁も悧羅校の寮へと送り届けると、
そのまま鷹宮へと顔を出した。




「お疲れ様です」

「おぉ、お疲れさん。
 早城、休みの日に感心だなー」


そう言いながらデスクでパソコンを開いて電子カルテに目を通す俺に
近づいてくるのは、嵩継さん。


「あっ、飛翔今日は神威君もういいの?」

続いて姿を見せるのは勇。


「勇、いつも週末のシフト手伝って貰って悪いな」

「僕の方は構わないよ。
 それに僕だけじゃなくて、皆手伝ってくれてるから」

「まぁな。んで由貴は?」

「由貴はもうすぐ帰ってくるんじゃないかな?
 さっき、急変が入って御大と一緒に病棟に走ってたから」

「そうか」

「あっ、後はこれ。知成から今日の差し入れ。
 昨日、家で焼いてきたらしいよ。

 甘さは控えめらしいから。
 疲れた体に、当分補給もいいかも知れないね」


そう言うとクッキーが入った袋を俺の傍に勇は静かにおいて、
その袋の中から一つ、クッキーを摘まみとると口の中に放り込む。


「おっ、オレも貰っていいか?」


そう言って次に指を突っ込むのは嵩継さん。



「ほらっ、早城お前も食え。
 何があったか知らんが、疲れてるなら無理はするなよ。

 神威の子育てに行き詰ってんなら、俺はまっ力になれんが、
 リズ夫人とか、水谷さんとかな、とっ捕まえてみろって。

 何とかなるかも知んないぞ」


知ってか知らずかそんなことを言いながら、
俺を背中に喝をいれるようにバシンと叩く。




そんな温もりを感じながら俺は今日までの不思議な体験を自身の中で整頓する。



その夜、久しぶりに由貴と時雨暮らす金城家へと邪魔した俺は、
アイツらに俺の体験を相談して、客観的な意見を求める。




俺の一族が特殊な一族だと言うことは、
幼いながらにも、家を離れた身でも理解していた。


だけどそれは……俺の想像でおさまるような、スケールの小さいものではなかった。



この先の未来への不安は広がっていく
俺自身の身に降りかかる役割、使命。




言葉にするのはあまりにも簡単で実践するには迷宮すぎて、
どうにもならないもやもやだけが、俺自身を包み込んでいた。