「母さん、行ってくるよ」
退院した翌日、俺は神威と二人
マンションを後にする。
俺が運転する愛車で向かうのは、
昂燿校と俺たちの故郷、安倍村。
昂燿校で、まず昂燿から海神へと転校手続きを終えて
アイツの荷物を梱包して運び出す。
荷物はその場で、
配達業者を手配して海神校へと発送する。
その後、再び車を走らせて安倍村へと入る。
華月入院の今、代行業務を万葉が委任されて
代行している。
二時間半の道程を走らせて辿り着いた先、
俺たちは数日ぶりに、総本家の門を潜った。
「お帰りなさいませ。
ご当主、飛翔さま」
何事もなかったかのように、万葉を筆頭に俺たちを
邸の中に招き入れる。
恐る恐る踏み入れた屋敷内も、
あの重苦しかった圧迫感は今は消えていた。
「万葉、華月が帰るまで村のことは任せる。
今日は父の墓参りをして向こうに帰る。
飛翔と行動を共にする。
お前は成すべきことを」
神威は万葉に告げると、万葉はもう一度深くお辞儀をして
その場から姿を消した。
その後、俺と神威は二人
山道を通って、あの日、黄金の雨が降り注いだ
白浜を超えた向こうにひっそりと立つお墓へと向かった。
俺の一族が順番に弔われているお墓。