「勇……どうしたら……。

 いっそのこと、飛翔と時雨の手で気絶させたら
 解決するでしょうか?」

「由貴、気絶は有効かもしれないけど
 その場しのぎだよ。

 裕兄さんがまだ居てくれたら……」



慌てて総本家までの道程を駆けだす勇。



「神威っ!!
 戻ってこい。


 神威っ!!」


何度も、何度も神威の名前を
呼びながらその腕を掴み続ける飛翔。



そんな繰り返しの中、
飛翔が神威君の腕を掴んで立ち尽くした。



思わず目の前に広がるその景色に、
私は自分の目をゴシゴシと右手でこする。



広がる世界は二人を包む黄金の雨。



柔らかな黄金の光に包まれた
慈しみの雨は、天から流れるように
二人の上に降り注いでいく。




その頭上に浮かび上がるのは黄金の龍。




神々しいまでに輝く、
その龍はやがて天から地上をめがけて
真っ直ぐに降り立つと飛翔と神威くん
二人の体内へと光と共に消えていく。






何かに遮られたように
動くことが出来なかった体。




動けぬまま、ただ目に映るものを
見続けるだけの時間を終えて硬直が解けた体を
自分自身で感じる。




指先が思い通りに動いたことを確認して
そのまま、崩れ落ちる二人のもとへと駆け出した。



黄金の雨はすでに消えて、
降りはじめた雨すらも止んで天からは、
太陽の光がゆっくりと顔を覗かせる。



神威君を抱くように崩れ落ちた飛翔はすぐに
体を起こすと無意識なのか、自覚してなのか
神威君の状態を確認するように指先が脈へと触れると
そのまま……覆いかぶさるように砂浜へと崩れ落ちた。




「飛翔っ!!。
 
 飛翔、大丈夫ですか?」




彼のもとに滑り込むように座り込むと
そのまま状態を確認してほっと、息を吐き出した。




「由貴、飛翔と神威君は?」



神威君は大丈夫だと思う。


神威君に何かあれば、
飛翔が意識を落とすはずがないから。


飛翔なら何が何でも自分を繋ぎとめるはず。