鏡を辿って踏み入れた世界。
その世界で俺は龍の背に乗って移動していた。
……何だよ……。
ありえねぇだろ。
こんな体験……。
内心毒づいた俺に、
流れ込んでくるのは深い心。
『我、主よ』
「お前……もしかしなくても、
雷龍?」
『いかにも』
その龍は暗闇の中、スピードを更に加速していく。
加速はすれども、障害になりそうな風圧は
不思議なことに感じられない。
「貴咲。
朱鷺宮、涼夜を探せ」
告げると龍は急旋回を遂げて、
体をうねらせながら一気に地上へと降下していった。
視界に映ったのは、
血の色なく、横たわる涼夜の姿。
慌てて龍の背から飛び降りて、
地上へと着陸する。
かなり高いところから飛び降りたにも関わらず
着地による衝撃が俺に伝わることはなかった。
何かが俺を包み込むように、
穏やかな金色の気が包み込む。
「朱鷺宮っ!!」
見つけた涼夜を引き寄せて声をかけるものの
アイツは何の反応も返さない。
「涼夜っ。
起きろよっ!!」
叫ぶように体を揺するも、
涼夜は動かなかった。
「影宮。
雷龍さま、こちらへ」
そう言って俺たちを呼び寄せたのは
何時の間に辿り着いたのか、
俺を鏡の中へと誘った咲と和鬼。