「ご当主~」
俺たちの姿を見つけた、
華月や、万葉。
一族の奴らが、
口々に名を叫び、
村の奴らの悲鳴にも似た声が
一斉に流れ込んでくる。
音の衝撃に再び心を奪われた
俺はその場で体制を崩し、
傾いだ体は、
今度は陸奥によって支えられる形になった。
「……当主……。
悪いっ」
申し訳なさそうに俺を見る
アイツを真っ直ぐに見据えながら、
その水の流れの勢いと現状を
地球(ほし)の声を聞き分けるように
感じ取っていく。
そんな音の洪水の
膨大なデーターと向き合うために
心を集中させ始めたとき、
朱鷺宮の声が届いた。
『解(かい)。
宝(ほう)、顕現せし神剣。
体内より生まれし。
宝剣、
全てのものを切り裂くものなり』
その言葉が流れ込むように
一気に大きくなって、
何度も何度もリフレインされていく。
わかるはずのない言葉を聞いて、
何故か……体だけは、
その意を組んで動き始める。
左手の刻印は
金色の印を結ぶ。
……そうだ……。
この感覚を俺は、
遠い記憶で
知っているような気がする。
ゆっくりと
隅々まで思い描いた刀は
俺の左手の掌から、
ゆっくりと姿を見せていく。
姿を見せた柄の部分を右手に持ち、
一気に引き抜くと、
その場で一振り水を斬る。
稲光にも似た閃光が
剣から迸った途端に、
目の前の水の渦は、
左右へとくっきりと寸断された。
突然の出来事に、
驚いたように凝視する陸奥。
生命力を削り取られていくような
錯覚と葛藤しながら、
必死に体を支え、
陸奥を引っ張り
その水の中の通り道を歩いて行く。
俺達が通過した背後から、
水は流れのままに水位を取り戻していく。
「神威」
何時の間にか、
村の入口まで降りて来ていた
飛翔に、陸奥を預けると
そのままその場に倒れ込むように
意識を手放した。



