☆
「神威、起きてるか?」
扉の向こう、
飛翔の声が聴こえた。
「起きたよ」
そう答えた俺の傍に、
歩み寄ってくる飛翔。
「帰宅して
また少し熱が上がってた。
魘されていたが、
どうかしたのか?」
飛翔はベッドサイドに、
飲み物を用意しながら
俺に話しかけた。
「夢を見てた……。
昔の夢を」
「そうか……。
熱は今度こそさがったみたいだな。
先にパジャマ着替えろ。
粥を持ってくる」
部屋を出て行った飛翔。
飛翔に言われるままに、
寝汗をかいたパジャマを脱いで
新しいパジャマに身を包む。
アイツと生活を初めて……
こう言う生活が、
普通なのだと思えるようになった。
俺が暮らし続けた徳力が、
異質すぎるかもしれないと。
再び戻ってきた飛翔の手には、
お盆に乗せられた小さな土鍋。
そこには、
飛翔の義母が作ったであろう
卵粥が姿を見せた。
飛翔に手渡されるままに、
粥を口元に運ぶと
空腹を訴えていたお腹は
次第に満たされていった。
「ごちそうさまでした」
静かに手を合わせて、
茶碗をお盆へと乗せる。
「なぁ、飛翔。
何で九年前、
お前は俺の前に姿を見せたんだ」
何度も飛翔に
問いかけたかった言葉。
「義母が兄貴からの手紙を
預かっていた」
そう呟いた飛翔のポケットには、
少し古びた封筒が姿を見せている。
飛翔はその手紙を
黙って俺の前に差し出した。
「何、読んでいいの?」
「あぁ」
促されるままに、
古びた封筒を開いて
中におさめられた便箋を取り出した。
☆
*
飛翔。
お前が再び、
自らの意思で
徳力と関わることを
選ぶならば
これを持て。
私が
亡き後の当主。
神威は、
まだ幼い。
叶うなら、
飛翔。
お前が
私に代わって
守ってやってほしい。
お前を私の意思で
一族から
外に出しておきながら
都合がいいかも知れんが。
来るべき時が来て
自らの意思で
徳力に戻ると言うなら
この札を仕え。
私の力、
私の宵玻との契約の絆が
封じ込められている。
一族に置いて、
宵玻と
交流出来しものは、
当主の一族のみ。
その札が、
一族の全てを
黙らせるだろう。
信哉
*
俺の知らない、
達筆な文字で綴られた
飛翔宛の手紙。
そして……
出て来た、小さなお札。
お札に綴られた文字は、
雷龍翁瑛
(らいりゅう おうえい)。
翁瑛は……
一族に伝わる、
ご神体だと聞いた……。
故に、今は……
飛翔と二人、
この手に龍の刻印がある。
「神威……」
「動き始めた……。
そう言うことなのか?」
「さぁな」
ご神体は
人を食らうってか?
力の代償?
対価?
それこそ、
贄そのままだろ。
「飛翔は父さんを
憎んだことはないのか?」
自分の都合で、
飛翔の一生を干渉し続けた父さん。



