私がオフェンスで、朱井君がディフェンス。
オールコートの一体一。
久々の感覚に少し笑う。
周りは、私たちのことを観つめている中始まる。
「…行くよ?」
「はいっ!」
ボールをつくと、…吸い付くように跳ね返ってくる。
少しボールは大きいけど、何一つ変わらない景色があった。
朱井君の真剣な目。
引退したら、ホントに恋しくなるんだな…なんて思った。
朱井君の手を出すタイミングは分かっている。
サッと出される手。
私はバックターンで交わして、朱井君のギリギリを抜ける。
そして、ハーフコートから思いっきり打った。
段々とゴールに近づいて行くボール。
あたしの中に小さな確信が生まれる。
ーーシュバッ!
軽快な音と共に、朱井君を見て少し笑う。
「…ねぇ、落ちてないでしょ?」
「…うん。先輩はズルいッスよ。絶対分かってましたよね?」
コクリと頷くと、ヤられた…とでも言うように仰向けで倒れこんだ。
私は少し笑って、ボールを取りに行く。
3ポイントシュート、ジャンプシュート、レイアップシュート…色々試して行く。
「よーし!一体一じゃなくて…2対2のオールコートにしよう。組は恋羽と啓の2人で組め」
「「はい」」
隣を見ると満面の笑みの朱井君。
「久々ですね、先輩と組むの」
「うん。…勝てる」
「ん?…どーして?」
私は自分の中で少し笑う。
朱井君の髪に触れた。
「…だって、朱井君が居るでしょ?」
私は少し笑って微笑みながら、朱井君の髪をくしゃっと撫でた。
「恋羽先輩が『啓』って呼んでくれるなら更に尽くします」
いたずらな笑みを浮かべる朱井君。
私はそんな朱井君をみてつい笑ってしまった。
「分かった。…勝ちに行こう」
そうだ。
高校生だろうが、誰だろうが…きっと私と朱井君の組み合わせでは勝てないと思う。
だって…朱井君だって、県で有名な選手なんだから。

