俺は、唯野さんを軽く睨みつける。
「…えぇ?」
オドオドとしている恋羽。
唯野さんは更に追い打ちをかけようとする。
「一緒に花火みたいな!」
「…」
百合月さんもこれには、ぎょっとビックリしている。
「唯野先輩、あたし慶ちゃんと行きたいからダメです」
「え?」
俺は驚きで声に漏らす。
「…そーだよね、慶ちゃん♬」
俺の腕に抱きついてくる恋羽。
「…え、まぁ?」
……約束してたっけ?
「そーなの!?ちょー残念!」
ガックリと項垂れる唯野さん。
「あ、それと…。俺のことは晴那斗先輩でいいから!」
恋羽と俺を見てハッキリと言う。
「あ、はい」
「分かりました」
俺と恋羽は若干驚きながらも、頷く。
「じゃあ、間宮くんも俺も愛宕先輩で。俺は…なんて呼べばいい?」
少し表情が硬くなる。
うーん…。
なんて呼んでもらえばいいのやら。
「うー…。じゃあ、愛宕先輩も''多和"でいいじゃないですか?」
俺に同意を求めてくる。
「……''多和"?」
俺は、驚きで恋羽を見る。
すると、言った張本人も驚いている。
「あ、あのっ!?その…ごめん」
シュン…と肩を落とす恋羽。
不安げに揺れる瞳。
俺は…もう分かっていた。
恋羽が愛おしそうに呼んだ「多和」は元カレだって。
「じゃあ、慶介で」
俺は少し微笑む。
なんか俺。
怖くなった?
別に…そんなに考えることないだろ?
元カレなんだし…。
得体の知れない様な奴なんだから。
………だから、不安なんだよ。

