お互い、ウォーミングアップをする。
「…百合月さん、ゴール使ってもいいですか?」
「…?嗚呼、構わないよ」
俺の目をみて、そう言う。
そして、すぐに視線は俺の後ろに…。
百合月さんはやんわりと…笑った。
そして…後ろを見ると、俺の裾をにぎる恋羽がいて…。
もしかして…百合月さん、恋羽に笑ったんじゃ!?
「…愛檎先輩、さっきはありがとうございました。安心しました」
恋羽は歩きだしていた百合月さんに声をかけた。
走り去って行く後ろ姿が…妙に引っかかって…。
伸ばしていた手は空を掴んで…そのまま。
最近、可笑しいかもしれない。
手をジッと見つめていると…、
「…慶、大丈夫か?今はお前の方が優れないが?」
類が肩を掴んで、声をかけてくれた。
「…ん、嗚呼。大丈夫だよ」
俺は目を細めてニッコリと笑った。
(いつもと…雰囲気が違うけど)
類は俺を心配そうにみてからゴールを使ってシュートをし始めた。
…俺は皆を心配させて、何がしたいんだよ。
恋羽だって…気がある訳じゃない。
わかってる。
分かってるんだけど…。
取られたくない。
…俺の知らない恋羽を、知られたくない。
たった3年離れていただけでも、距離は空いてしまうもの。
「…恋羽。好きだよ」
俺は拳を握りしめた。

