「…ど、して」

多和は私の目をジッと見る。

周りはガヤガヤとしていて、私達には見向きもしない。

「…………そのままだよ。別れよう?」

私はニッコリと微笑んだ。

最後くらいは笑顔でいたいよ。


「…ねぇ、多和。また君に逢えたら…。友達だったらいいね」


私は多和に今まで見せた中で1番の笑顔を向けて、人混みに紛れ込んだ。

…今日は人が多くて良かった。

更に涙が出てきた。

こんなに、好きだったのに……。

「……恋羽っ!…おい…何処にいるんだよ!」

捜してくれているの?

今すぐにでも…『ココにいるよ』って言いたいよ。

「…晟弥、終わったよ」

私は涙を拭って微笑んだ。

「そ、か」

寂しそうに笑うその姿は…。

3年前の卒業式の……。

裕貴君と重なってしまった。

「…俺の気持ちは変わらないよ。…恋羽の答えを聞かせて欲しい」

「…ごめんね?…私には大事な人がいる。私を動かずに待っていてくれる。だからその人に今から会いに行ってくる」

「…わかった。俺の初恋が恋羽で良かった」

……壊れちゃいそうなその笑みに、私は…いつしか多和にしたみたいに、肩に手を当てて背伸びをして…。

チュッとキスをした。

「なっ!?」

いっきに赤く染まった晟弥。

「…ありがとう」

私が晟弥に笑いかけると、晟弥もニッと笑ってくれた。

…私は急いで家に帰る。


「ただ「恋羽姉ちゃん!」

玄関のドアを開けると、ドンッ!と抱きついてくる美繋。

「おかえり、恋羽」

お父さんはリビングから顔だけ覗かせる。