「恋羽、頑張ってね」
最後に沙苗ちゃんは微笑んだ。
指定された教室に入ると、結構な人が面接を終えている。
私の席は、窓側の前から3番目。
手前の席には男の子が座っていた。
参考書でも読んでいるんだと思ったら、…小説を読んでいた。
一応カバーはつけているけど…透けて見えている。
私はその人をいない人と思いながら、自分の席に座った。
そして、バスケ部のマネージャーとして話は進められているので、一応雑誌に目を通しておく。
たまに、ハンドボールの雑誌も兼ねているけど、周りはなかなか気付かない。
私はマーカーペンをクルクル回りながら見て、取り入れたいやつに、マーカーを引いて行く。
ペン回しをしているのは、私だけではなかったようだ。
手前の席の人も回していて…。
案外、気が合うのかな、なんて思ってしまった。
スルリと指と指の間から、マーカーペンが消えた。
カタン…と音と共に床に呆気なく落ちる。
私は溜息をついて立ち上がろうと、両手を机に乗せた時だった。
「…はい」
サッと、私の目の前に差し出されたソレ。
私は驚きで、顔をあげた。
「…あ、ありがとう」
「どういたしまして」
ふんわりと優しく笑い、私の手にマーカーペンを握らせる。
前を向こうとして…私の手元を見て…止まった。
「…?」
「…ま、真夏?」
「…は?」
なんでこの人、私の名前を知ってんの?

