同時刻ーー…



「ルイス、今からでも考え直さないか?」


「煩い。怖いなら、帰れ。俺1人で行く。」



「それはダメだ!!」



「なら、ついてこい。」



「って、そうじゃないだろ!もし、何かあったらどうするんだよ!?何かあってからじゃ遅いんだぞ!?」



「それは国民も同じだ。何人の犠牲を出せば、国は動く?何百か?何千か?そうなってからでは遅いと何故誰も気づかない?」



「分かってるよ、だけど、仮にもお前はこの国の第一皇子なんだ。せめて、万全の体制になってからでも…。」

ギロリとクラリスを睨み、黙らせる。



「はぁ…分かったよ。行くよ、行けばいいんだろ?」

どこか投げやりの言葉だが、真剣な表情になったクラリス。



目の前の森。
通称、魔の森で、ここ数年何人もの国民が行方不明になっていた。今年だけで既に30名ほど。

魔物が出るという噂もあるが、なにせ見たことのある者はいない。


確かな証拠は無いに等しい。



噂だけが一人歩きをしている現状に、それならばと自らが視察という名目で出てきたわけだ。

外観的には普通の森と変わらない。



至って普通。

まあ、外から見て分かるとは到底思っていなかったが。


ずっとここにいても仕方ない。




「行くぞ、クラリス。」

乗っていた馬の腹を軽く蹴ると、ヒヒーンと声高く鳴いた馬は駆け出した。



「ちょ、待てよ!!置いてくなッ!」

急に走り出した主の背中を慌てて追った。




数分間走り続け、随分と奥まできてしまった今はゆっくりと森を巡回していた。


あぁ…入ってしまった。と絶望感を醸し出すクラリスとは反対に俺は何も見逃さないように森をくまなく見て回る。