白と黒の世界




「シェリー様、美味しいです。」

ティアからの初めての美味しいという言葉に嬉しく思いながらも、その前の言葉にムッとする。



「ティア。様はいらないっていつも言ってるでしょ?」



「あ、すみません。癖がなかなか直らないもので。」



「本当は敬語も直して欲しいんだからね。」



「それはご勘弁ください、シェリー。」



「ふふ、まあいいよ。今日はこれぐらいにしといてあげる。」

シェリーと呼ばれたことに頬を緩め、パンをまた口に頬張る。




こんな小さな幸せが幸せでたまらない。



私はゆっくりパンを食べながら、ふと目に入った窓の外をぼんやり見ていた。

ざわりと木々が風で揺らぐ。



日光さえ入りにくいこの場所は年がら年中薄暗い。

不便と言えば不便だけど、日光に当たらないおかげで、シミひとつない透き通るような白い肌を保てていると考えれば、案外悪いものではない。ということにしておく。



人がいないという点では賑わいには欠けるけど、寂しいと思わない。だって、ティアがいてくれる。

私にはティアがいてくれれば、それだけでいい。




この暗く狭い森の中で私は満足していた。