黒の国と白の国の国境。
それは魔の森と呼ばれる暗く深い森。
普通の人なら、基本立ち入らないその場所。なぜなら魔物が出ると噂されているからであった。
闇と光の狭間であり、そこは紛い物が生まれる原因。
他にも魔の森に入った者が行方不明になったり、重傷を負う者が後を立たなかったため、国民は近付かないことを暗黙の了解としていた。
そんな森の奥深く。
その森に相応しくない色とりどりの花が咲き乱れ、小さな動物から大きな動物までが集う一つの小屋があった。
小さな煙突からはもくもくと白い煙が立ち込め、微かながらに焼きたてのパンのいい匂いが香ってくる。
小屋のすぐそばには簡易的に作られた物干し竿があり、パタパタと服が風に靡いていた。
薄気味悪い森から考えられないほどの穏やかな光景。
そして、また。
そこに住む住人も穏やかであった。
