カサカサと革靴が草と擦れる音が嫌に耳に付く。音は最小限にとどめてはいるもののやはり、音を無くすことはできない。



カサリカサリと歩いて行くうちに、耳には水が流れる音。動物達の息遣い。そして、


「子犬ちゃん冷たいってば!」





“ヒト”の声。を、しっかりと捉えた。


まさか、こんな森の奥に人がいるとはな。考えてもいなかった。

もしかして、今までのことは全てあいつが関わっているのか?




しばらく、考え込んだ後。

とにかくどんな人物なのか見てやろうと、一歩また一歩と近づく。



どんどんと近づく声はとても楽しそうで、こんな奴が人を殺すだろうか?と、疑問に思ってしまう。

そして、あと少しで姿が見えるって時。




バキッ


危機感が緩んだのか小枝を踏んでしまった。

その音は静かな森にはあまりにも大きな音で、一斉にこちらを見た動物達は




「皆!どうしちゃったの!?」


女を置いて、慌てたように走り去る。




呆然とその様子を見ていた女は音の根源でもある俺にゆっくりと視線を合わせ、俺を認識すると絶望の色を醸し出した。

俺は久しく見ることはなかった白の住民に少しの間、目を奪われた。



自分とは全く異なる色を持つ白の住民。




キラキラと輝く白い髪に射抜くようなピンクの瞳。質素な服を着てはいるものの、どこからか溢れる気品に目眩を覚える。


「あなたはだあれ?」

最初に声を出したのは女の方だった。


怯えたように紡ぎ出される声にハッと意識を集中させる。




「お前こそ誰だ。何故ここにいる。」



「私は…。」

捲し立てるように聞く俺に言葉を濁す女。何か話せないほどのやましい事があるのか?


ますます怪しい。



「ここは魔の森と言われる森。入った者は行方不明になるか、重傷を負う危険な森。なにに、なぜお前はここにいる!まさかお前がその犯人なのか!!」


何も話さない女に苛立ちを感じ、怒鳴り声を上げる。