無神経な男子生徒にあたしは怒りを覚えた。

文句を言いたいのを堪えて、無意識に唇を噛んでいると、翔平の指があたしの唇を引っ張った。

「んんっ?」

「唇かむなよ。腫れるぞ?」

「ん? あ、うん……」

そこへカウンター越しから冷やし中華が差し出された。

「はい! 冷やし中華2つ! 出来たよー!」

食堂のおばちゃんの元気な声。

あたしたちはそれぞれのトレーに、冷やし中華と水を持ってちょうど空いた窓際の席に着いた。

「「いただきます」」

窓からサッカー部の練習が見えて、部員の中に小杉を見つける。

「サッカー部、もうやってるんだね。小杉、お昼食べたかな」

「適当に食っただろ。別に気にしなくていいし」

「翔平っ、小杉は体育館からあたしを運んでくれたし、気が付くまでいてくれたんだよ?」

「そんなことぐらいわかってるさ。亜美、健人が気になるのか?」

「そう言うんじゃなくてっ」

「健人の話題はやめよう」

翔平……。

あたしは翔平から冷やし中華のお皿に目を落とし食べ始めた。