「伊藤」

「伊藤？」

「伊藤いないのか？」

放心状態のあたしはやっとかっちゃんの声が耳に入ってきて慌てて返事をする。

「あ！　はいっっっ！」

「なんだ、亜美。勉強疲れか？　ホームルーム中に寝るなよ」

かっちゃんは笑いながらあたしに言うと、次の人の名前を呼んだ。

あたしはなんであんな夢を見たの？　正夢？　それとも幽体離脱してあの場所にいたとか？　ううん、いくらなんでも幽体離脱なんてありえない。

「先生、聞きたいんですけど？」

物事をはっきりさせないと気が済まない我がクラスの優等生の佐竹（ｻﾀｹ）さんが手を挙げた。

「ん？　なんだ？」

「電車に轢かれた先輩が自殺したって本当ですか？」

「そのことか……そうだ」

かっちゃんは言葉少なげに答えた。

その時――

「嘘だ！！！！！！」

小杉が立ち上がって叫んだのだ。