「亜美」

「どうしたの?」

「まだ俺に話せない?」

翔平はあたしが話すのをずっと待っていてくれていた。

正直、ひかりのことを知っているのはあたしだけ。

心細いのは確かだ。

「……」

「俺じゃ頼りにならない?」

「頼りになるとか、ならないんじゃなくて……」

言ってしまおうか……。

その時、ピューッと冷たい風が身体に当たる。

真夏の夕方なのに、その風は異常に冷たく感じて、あたしの身体はブルッと震えた。

明るかった空は徐々に薄暗くなってきている。

腕時計を見ると、もう6時半を回っていた。

「翔平、あとで話すから帰ろう?」

「わかった。戻ろう」

あたしたちは元来た道を引き返す。

翔平と今日の練習の話などを話していると、ふと何かを感じて振り返ってみる。

「きゃっ!」

1メートルほど離れた後ろにぼんやり立つひかりの姿があった。