その夜、なにか起こるのではないだろうかと、覚悟して寝たものの、朝になって目が覚めると何もなかったことに拍子抜けした。

小杉と彼女は何も起こらなかったよね?

悪夢は見ていない。

でも、悪夢がすべてではない。

なにかあってもその時、あたしは……。

学生服に着替え、手にスマホを持ちながら階段を下りていると――

ズルッ!

スマホに注意を向けていたせいで、最後の階段を1段踏み外した。

「いたっ!」

最後の階段にお尻をしたたかにうち、床にペタッと座り込んでいた。

「いたたたた……」

「亜美ちゃん! なにやってるのっ!」

階段の上から麻美があたしを見ている。

トントントンと身軽に階段を下りてきて、あたしの隣に立つ。

「1段踏み外しちゃった」

まだ痛みで立てなくて、お尻をさすりながら苦笑いするあたしだ。