「んー。あたしは見えないの。何かは感じるんだけどね。小さい頃、強い力があったのをお母さんは心配して、見えないようになんかされたみたい。我が家の猪里って苗字なんだけど、昔は祈(イノリ)だったの。霊力の強い巫女家系で、亡くなったお母さんもそうだったんだ」

玲奈のお母さんは中学一年の時に交通事故で亡くなったと聞いている。

「霊力の強い巫女家系……でも、巫女ってお兄さんは男だよね?」

「小さい頃、兄貴は全く霊力がなかったんだけど、しだいに強くなっていったみたい。実際、見えると知ったのは兄貴が高校生の時で、それまで黙っていたんだよね」

「そうだったんだ……」

あたしにはひかりしか見えない。

他の霊は見えないけれど、たくさん見えたらきっと気が狂いそうになるだろう。

「とにかくっ! 兄貴はちょっとやそっとの霊になんて負けないから相談しなよ」

玲奈はあたしがひかりという霊に悩まされているのを知っていたみたいだ。

「うん。ありがとう」

「じゃあ行くね! 部活頑張って!」

玲奈は元気よく手を振り、あたしも振ると走って行ってしまった。

玲奈、不思議な子。