隣の駅で降りると、すでにすごい人ごみ。

人の波に流れるように、河川敷を目指す。

「すごい人だねー」

人に押されるように歩いていると、みのりが隣に並んだ。

「うん。いつものことだよ」

あたしとひかりは毎年恒例のことだった。

小学校の頃はどちらかの母親が付いてきてくれ、中学校になるとふたりで来るようになった。

『昨日の事件が離れたところで良かったね。もし開催場所だったら中止になっていたかもしれないよね?』

『ピアノ線張った犯人が捕まったって』

そんな声があたしの耳に入ってきた。

えっ……?

『近所の浪人生が犯人らしいよ』

近所の浪人生?

『でもさ、ピアノ線張ったの、覚えていないらしいって報道されてたよ』

『そんなの言いわけじゃない?』

ひかりが原因なら、本当にその浪人生は覚えていないのかもしれない。