脚をふんばり自転車を止めたあたしは辺りをキョロキョロ見回す。

一般道路からはずれた道には、街灯が所々にぽつんとあるだけで、誰もいない。

「誰かに呼ばれたんだと思ったのに……あの声は……」

ひかりに似た声だった。

周りに人もいない。

ただの空耳だったんだと、あたしは納得して自転車をこぎ始めた。


キイイ……。

小さな門扉を開けて自転車を塀にそって停めると、玄関まである四角いタイル石の上を歩く。

小さな庭だけど、芝生を植えているからちゃんとタイル石の上を歩いてとママに口を酸っぱくして言われている。

疲れた重い足取りでタイル石の上を歩いていると、一瞬あたりが真っ暗になるが、すぐに明かりを取り戻す。

玄関ドアの上にある蛍光灯が一瞬消えては点くのを繰り返していた。

「もう、玄関の蛍光灯替えといてよ……」

そんなことを呟いていると、蛍光灯は暗くなった。

今度はすぐに点かない。

ドアノブに手をかけたとき、ポンと肩を叩かれた。

妹の麻美かと思い、振り返る。

後ろには誰もいない。