女たちは、黙り込んだ。
「うわっ、紺野やべぇ、超かっこいい」
「言ってやれ言ってやれ」
「そうだよ、モテない女たちがうるせーんだよ」
教室から聞こえる声に女たちは唇を噛みしめ、
席に戻っていった。
その時、「ありがとう」って、声が突然して振り向くと、
宇崎さんが、真っ赤な顔で私を見上げていた。
「あんたもさぁ、モテる彼氏持って大変だろうけど、
しっかりしなよ。
他の男に媚びてるとか、そういう噂が立つってことは、
少なからず、あんたにも原因があんだよ。
誤解されないように、自分の行動をちゃんと考えな」
私がそう言うと、宇崎さんはハッとした顔をして、
「うん」とかわいく頷いた。
ちきしょーどこまでもかわいいな、くそっ。
私は、自分の席へと戻った。
「なんかあったの?」
綾香と春奈が教材を持って戻ってきた。
「別に、なんもないよ」
「ふ~ん」
二人は教卓の方へと歩いて行った。
あぁ........やっぱ我慢できなくて言っちゃったよ。
これだから、女に見られないんだ。
背もデカいし、きつい猫目だし、
性格、こんなだし。
私にも少し分けてくれよ、宇崎さんのそのモテ要素を。
「はぁ.......なんで私は.......」
自分の机の上で両手で頭を抱えたら、
机の上に、制服のブレザーの袖がのっかっているのが見えた。
ん?
両手から顔を上げると、
さっき、宇崎さんを連れ出した背のデカい男、前の席の吉井が、
私の机の上に片腕をのせて、壁に背をもたれているのが見えた。



