坂を下り切り、右に曲がって公園の前を通った。
「仕事で忙しいのわかってたのに、
私、わがまま言って困らせて。
ちょっと、喧嘩みたいになっちゃって。
口きかない状態になって.........」
家の前に着き、吉井が傘を差したまま、
私の前に立った。
「そのまま、
仲直りしないまま、お父さん突然死んじゃったから........
だから私.......」
やばい、泣きそうだ。
こんなこと、誰かに話したの初めてだ。
なんで、泣きそうになってんの私。
葬式でも泣かなかったのに。
誰かの前で泣くなんて、私はそんなことしたくない。
父親を突然亡くした、かわいそうな娘って思われたくなかったから。
だから、泣きたくなった時は、
いつも部屋の中で、枕に顔を埋めて泣いていたんだ。
かわいそうって思われたくない。
同情されたくない。
「ごめん、こんな暗い話して。
あぁ、だからつまりさ、
私のお父さんは、優しい人だったよ」
あはははっと、ごまかすように笑って顔を上げると、
吉井が私の腕を引っ張って、
傘を差したまま、片手で私を抱きしめてきた。



