校舎に入り、大廊下を歩いて下駄箱に近づいた時、
キュッキュッキュッと、こっちに走ってくる足音がして、
思わず振り向くと、
吉井がこっちに向かって走ってきて、
私の目の前で立ち止まった。
「えっ???吉井???」
「お前、何やってんだよ」
吉井は少し息を切らしていて、
黒いTシャツを引っ張って顔の汗を拭いたから、
引き締まったお腹がちらっと見えて、
目のやり場に困ってバッと横を向いた。
「何って、別に何もしてないし」
横を向いたままそう言うと、
頭をガシッと、まるでボールのように掴まれて、
前を向かされた。
吉井は私の頭を掴んだまま、少し屈んで私の顔を覗き込んできた。
「なんで体育館に来たんだよ」
ばっ、ばれてるっ!!
「はっ????行ってませんけど。
ていうか、ち、近いんだよっ!」
私の顔を覗き込んでいる吉井の顔が近すぎて、
顔を背けたいんだけど、頭を掴まれているから動けなくて……
頬が熱くなってしまい、リュックの肩紐を握りしめた。
きっと今、私の顔はおかしいぐらい真っ赤だ。
「まさか今、ひとりで帰ろうとしてねぇよな」
えっ。
「帰り……ますけど」
吉井は、あからさまにムッとして、
覗き込むのをやめて、
私を見下すように睨んできた。
「お前は俺と帰るんだろ、待ってろよ」
吉井……
吉井は頭を掴むのやめて、自分の髪をくしゃくしゃっとした。
「いいか、ここ動くなよ。
今着替えてくるから」
「えっ、吉井?ちょっ……」
吉井は私の言葉も聞かずに、くるっと向きを変えて、
また渡り廊下の方へと走って行ってしまった。



